[090504]第11回公開憲法フォーラム
平成21年5月3日、「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(通称「民間憲法臨調」)主催の第11回公開憲法フォーラムが開催されました。
今回のテーマは、
『国の安全・独立と憲法9条 —対馬・ソマリアを問う—』
でした。
ジャーナリストで民間憲法臨調世話人の櫻井よしこ氏の基調提言に続き、今回は、山谷えり子(自民党参議院議員)、長島昭久(民主党衆議院議員)、秋山昌廣(海洋政策研究財団会長)の三氏がパネリストとして登壇し、標記テーマに関するシンポジウムが行われました。
なかでも注目を集めたのは、民主党の安全保障問題エキスパートとして知られる長島議員の問題提起でした。同議員が取り上げたのは、2006年7月に、海上自衛隊基地や米海軍基地のある横須賀港を一望できる高台の土地を、中国やロシアの関係者が購入しようとした問題です。
中国人やロシア人から「土地を売ってくれ」ともちかけられた会社経営者は、事の重大さに危機感を覚え、当時の防衛庁長官らに手紙で状況を知らせました。ところが、防衛庁からは何の反応もなかったため、こんどはシーファー駐日米大使(当時)に同様の手紙を出すと、米海軍犯罪捜査局がすぐに調査に訪れたそうです。
この件につき、長島議員は衆議院安全保障委員会で防衛省に見解をただしました。すると、防衛政策局長からは、「手紙が到着後確認したが、『部隊の運用に影響はない』と判断した」との答弁が返ってきたといいます。
わが国の安全保障に最も重い責任を負っている官庁の幹部が、ここまで脳天気にかまえているのかと思うと暗澹たる気分になりますが、長島議員によれば、国防上問題のある法律行為はすでに全国至るところで既成事実となっているようなことを、防衛省の職員は嘆息まじりに話していたそうです。
安全保障に対する日米の対応の違い、というより、アメリカが取ったようなごく当然の対応ができないわが国の国防政策の危なっかしいありさまが浮き彫りとなった事案です。
そこで長島議員が注目しているのは、外国人土地法(大正十四年四月一日法律第四十二号)というたいへん古い法律の適用可能性です。同法第4条には、「国防上必要ナル地区ニ於テハ勅令ヲ以テ外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得」という規定があるので、これを適用して、国防上問題のある外国人の法律行為を規制すべきだというのです。
長島議員が法務省に確認したところ、同法は現在でも適用可能であるとの明確な見解が得られたといいます。日本国憲法の趣旨に違反せず、失効確認もされていない旧憲法下の法律が有効なのは当然のことです。しかし、文言のなかには「勅令ヲ以テ」という、現行の法システムにはそのままでは当てはめることのできない部分もありますので、これに代わる「政令」の制定と適用が強く望まれるところです。
ちなみに、外国人土地法に該当する法律は韓国にもあり、適用されているそうです。主権国家の責務として、当然備えておくべき法制度だということです。
このほかにも長島議員は、ソマリア沖への自衛艦派遣問題に関しても、警察と同じポジティブ・リスト方式(行使できる権限を法に限定列挙する規制方式)で武力行使が規制されている限り、どんな法律をつくっても自衛隊はわが国の防衛と世界の安全保障に十全に貢献することができず、その根底には憲法9条という足かせがあることを、具体的にわかりやすく説き、9条「2項」の一刻も早い改正を強く訴えておられました。
長島議員は「民主党議員としてではなく、一国会議員として、信念を述べる」旨言明し、じつに堂々たる論陣を張っておられたのが印象的でした。
シンポジウムの後、民間憲法臨調事務局長・百地章氏(日本大学教授)から、
『(緊急提言)わが国の安全と独立を確保するため、速やかに国会に憲法審査会を設置し、憲法九条改正のための憲法論議を開始せよ』(PDF)
が読み上げられ、フォーラムは閉幕しました。
なお、今回はもう一つの目玉があります。
民間憲法臨調運営委員会が、憲法9条改正問題についてわかりやすくQ&A形式で解説したブックレットを刊行し、ご来場の皆様に配布するとともに、書店等での販売を開始しました。
民間憲法臨調運営委員会編『憲法9条Q&A —改憲論への疑問に答える20の論点—』(明成社、2009年5月3日)550円(税込)
<目次>
はじめに
Q1) 戦後日本の平和が守られてきたのは、憲法9条のおかげではないのですか?
Q2) 憲法9条は世界的にも高い評価を受けていると聞きましたが?
Q3) 日本国憲法は世界でも最も徹底した平和主義の憲法です。そしてそれを私たちは誇りに思っています。この憲法を変えることは、平和主義を捨てることになりませんか?
Q4) 学校の先生たちは、「9条が改正されれば若者が戦場に送られる」ようなことを言っていますが、本当ですか?
Q5) テロと戦うためにインド洋へ海上自衛隊を派遣するのは、平和主義を定めている憲法の精神に反しているのではないですか?
Q6) ソマリア沖に海上警備行動を発令して海上自衛隊の艦船を派遣するのは、憲法に違反するのではないですか?
Q7) 最近、航空自衛隊のイラク派遣に違憲判決が出たそうですが?
Q8) 9条は民間団体のアイデアをGHQ(連合国軍総司令部)が支持して作られたのだから日本人の発明だ、と教えられましたが、本当ですか?
Q9) 日本国憲法の成立に影響を与えたという「憲法研究会」や、護憲派の憲法学者・鈴木安蔵について、もう少し教えてください。
Q10) 日本共産党は、日本国憲法制定当時から9条を熱狂的に支持してきた護憲政党なのですか?
Q11) 「九条の会」とは、どのような会なのでしょうか?
Q12) 社会党(現在の社民党)は、憲法制定当時どのような態度をとっていたのでしょう か?
Q13) 軍事力によっては、平和を守ることができないのではないですか?
Q14) 戦争の発生を想定した規定を憲法に置くのは、平和主義の理念に反しませんか?
Q15) 日本は、軍事的手段ではなく、外交努力によって国際紛争の解決に取り組むべきではないでしょうか?
Q16) アメリカの知日派から日本の憲法見直しを求める声が高まっていますが、日本はそれに応える必要などあるのですか?
Q17) わが国はこれまで国連中心主義の外交を行ってきたのですから、国の安全や防衛についても、アメリカではなく、国連にたよった方がよいのではありませんか?
Q18) 憲法を改正して軍事力の保持を明記すれば、近隣諸国の不安をあおり、かえって日本が危険にさらされることになりませんか?
Q19) 個別的自衛権の行使は認められるとしても、集団的自衛権の行使まで認めるのは、明らかに憲法9条の規定に反しているのではないでしょうか?
Q20) 現行憲法のもとで、すでに実質的な「軍隊」である自衛隊が設置されているのに、なぜわざわざ憲法9条を改正する必要があるのですか?
民間憲法臨調提言(平成18年5月3日発表)
<特徴>
●多くの人々の素朴な疑問に答え、改憲、とくに憲法9条2項の改正がなぜ必要なのかをわかりやすく解説しています。
●「九条の会」をはじめとする護憲派の主張や、学校で使われている教科書の憲法9条に関する記述のなかに、イデオロギー的に偏向した虚偽や歪曲が数多くみられることを、事実に基づいて検証しています。
●航空自衛隊のイラク派遣、ソマリア沖への海上自衛艦派遣など、安全保障をめぐる近時の事案を通して、憲法9条2項のかかえる問題の本質を的確に理解することができます。
これまで護憲論の立場からは、岩波ブックレットをはじめとする啓発書が多数刊行されてきましたが、改憲論の立場からのものとしては、おそらく最初の試みであり、5月3日の読売新聞でも取り上げられ注目されています。
ここで特に強調しておきたいのは、民間憲法臨調は、憲法9条全体の改正(=平和主義をやめる)ではなく、9条1項の平和主義(侵略戦争放棄)の理念を生かすために9条2項の改正を提言しているということです。
えっ、どういうこと?……とお感じになった方は、ぜひこの『憲法9条Q&A』をお読みになり、憲法9条や国家安全保障に対するバランスの取れた合理的な観点を獲得していただければと思います。
なお、本書は、全国の書店での販売とともに、まとまった冊数(5冊以上)を割引価格にて一括購入していただくことができます。下記の、
をダウンロードし、ご記入の上、ファクスにてお申し込みください。
| 固定リンク

























最近のコメント